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大阪簡易裁判所 昭和55年(ハ)2619号 判決 1980年11月27日

原告 株式会社大信販

被告 溝口弘孝

主文

被告は原告に対し、コスモシステム株式会社よりカセツトテープ等の収納箱の底板の上の、溝、穴などが正常な位置にある棚板一枚の引渡を受けるのと引換に二八万三五〇〇円を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決主文第一項は仮に執行することができる。

事実及び理由

一、請求の趣旨

被告は原告に対し三〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から完済まで年六分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

仮執行の宣言。

二、事実関係 別紙のとおり

三、理由

(一)  請求の原因事実(一)、(二)及び原告がその主張の日に到達した内容証明郵便で、その主張のような催告をしたことは当事者間に争がない。

成立に争のない甲第一号証、証人田中照巳の証言及び被告本人尋問の結果によると、被告がコスモシステム株式会社から買受けた英会話の教材等(カセツトテープ、テープレコーダー、書籍、組立式収納箱(棚)等)のうち収納箱の底板の上の棚板の隅の穴、溝等が、正常なものと反対の位置にあつて、組立てができず、被告は昭和五三年九月ころその旨右会社に苦情の申入れをしたことが認められる。

してみると、売買目的物のうち収納箱の右棚板に隠れた瑕疵があるというべきである。

原告は、原被告間の代金立替委託・立替求償金割賦支払契約には、瑕疵担保責任抗弁切断の特約があると主張し、前記甲第一号証によれば、原告主張のような特約がされていることが認められるけれども、同号証及び弁論の全趣旨によると、原告は販売店に対し継続的な立替給付をしており、その間に実質上の資金供給の継続関係が認められるばかりでなく、販売店と買主との間の商品売買契約があつて始めて、買主と原告との間の代金立替委託及び立替求償金割賦弁済契約があるのであつて、両者は密接不可分の関係(あるいは、商品売買契約は立替求償金割賦弁済契約の原因ないし基礎関係)にあるというべきであり、原告は販売店に代金を立替支払うこと(代位弁済)によつて法律上当然に販売店の買主に対する代金債権を取得する(民法五〇〇条)のであるから、原告は一面において実質上商品の売主(販売店)と同視すべきである。そうすると、瑕疵担保責任の抗弁切断の特約の効力は実質上の売主としての原告に及ばないというべきである(販売店、即ち売主と買主との間の売主が担保責任を負わない旨の特約を肯認しうる証拠はない)。原告の右主張は採用できない。

被告は、右不完全履行(瑕疵)を理由として売買契約を解除したと主張するけれども、証人松井慎一の証言によると、完全な履行(右瑕疵の修補)は容易であることが認められ、これをもつて契約をした目的を達することができないということはできないから、解除することはできないといわねばならない。被告の右主張は採用できない。

当事者間に争のない事実(二)によると、本件口頭弁論終結時(昭和五五年一〇月一六日午前一一時)においては、立替求償金割賦弁済金三四万円のうち二八万三五〇〇円につき弁済期(同年九月末日)が到来していることが明らかであるから、被告は前記会社より完全な履行(右瑕疵の修補)、即ち完全な前記棚板一枚の引渡を受けるのと引換に右二八万三五〇〇円を支払うべき義務がある(民法五七一条)ものというべきである(前記会社が被告に対し、完全な右棚板一枚を現実に引渡提供したことを認めるに足りる証拠はない)。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 山内敏彦)

(事実関係)

一、請求の原因

(一) 原告は割賦購入あつせんを業とする会社であるが、昭和五三年八月一二日被告の委託を受け、被告がコスモシステム株式会社(販売店)より買受けた英会話教材の代金三四万五〇〇〇円のうち三四万円を同年九月三〇日立替え支払つた。

(二) 被告は同五三年八月一二日原告に対し右立替金三四万円を同年九月から昭和五六年二月まで毎月末日一万一三〇〇円(但し第一回は一万二三〇〇円)ずつ三〇回に分割して原告に支払うべく、分割弁済を被告が一回でも怠るときは期限の利益を失うべき旨契約した。

(三) 被告は、その支払をしないので、原告は被告に対し昭和五四年一一月二八日送達の内容証明郵便で、書面到達後二〇日以内に遅滞に係る分割求償金一五万九二〇〇円を支払うよう催告した。

被告はその支払を怠り期限の利益を喪失した。

よつて、原告は被告に対し立替金三四万円のうち三〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日たる昭和五五年七月二七日から完済まで商法所定年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二、認否・主張

(一) 請求原因事実(一)、(二)はこれを認める。

(二) 売買の目的物の一つである組立収納箱(棚)の底板の上の棚板の隅の穴、溝が正常なものと反対の位置にあつて、その組立てができないので、昭和五三年九月ころ、被告は売主のコスモシステム株式会社に対し、完全な右棚板と取替えるよう申入れたところ、同会社はその取替えをする旨返事しながら、これを実行しない。そこでそのころ被告は右会社に対し売買契約を解除する旨の意思表示をした。売買契約は失効し、存在しないので、その存在を前提とする被告の立替求償金弁済の義務はない。

三、原告の再抗弁

原被告間の立替求償金割賦弁済契約によると、「商品の瑕疵に関しては、被告と販売店(前記会社)との間で処理し、被告はこれによつて原告に対する支払(立替求償金の弁済)を怠ることはない」旨の特約がされているので、たとえ商品の隠れた瑕疵があるとしても瑕疵担保責任の抗弁をもつて原告に対抗することはできない。またその瑕疵の修補は容易であり、これをもつて売買契約の目的を達することができないということはできないから、被告は契約の解除をすることができない。

四、証拠関係<省略>

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